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日本車バイクなのにアメリカ生まれ。カワサキのLTDモデル誕生の背景

「カワサキの旧車」と聞けば、日本で作られ、アメリカへ輸出されたバイクを想像するかもしれません。 ところが1970年代、カワサキはすでにアメリカでバイクを作っていました。 場所は、ネブラスカ州リンカーン。 そしてこの工場から、後にLTDと呼ばれる、いかにもアメリカらしいカワサキが生まれていきます。

日本メーカーがアメリカでバイクを作り始めた時代

カワサキは1974年、ネブラスカ州リンカーンに生産拠点を開設しました。 当時、日本の二輪・四輪メーカーとしては初となるアメリカの生産拠点でした。 翌1975年1月、最初にラインオフしたのがKZ400。 つまり、カワサキのアメリカ生産の歴史は、大型のZやLTDではなく、この400ccモデルから始まっています。

日本からアメリカへ輸出するだけではなく、アメリカでカワサキを作る。 1970年代半ばには、すでにそんな時代が始まっていました。

そして1976年、KZ900 LTDが登場する

翌1976年に登場したのがKZ900-B1 LTDです。 通常のKZ900とは違い、高めのハンドル、段付きシート、クロームパーツなど、当時のアメリカで人気だったカスタムスタイルをメーカー自身が最初から与えたモデルでした。 カワサキはこのKZ900 LTDを「最初の日本製カスタムクルーザー」と位置づけています。 しかも、このモデルもリンカーン工場から生まれました。 つまりLTDは、単に既存のKZへ装飾を加えただけではありません。 アメリカ市場を見ながら、アメリカで作られたカワサキだったのです。

LTDは「アメリカが欲しかったKZ」

当時のアメリカでは、速いだけのバイクではなく、自分らしいスタイルを持ったバイクも求められていました。 そこでカワサキは、Z1やKZで築いてきた高性能4気筒のイメージに、アメリカのカスタム文化を組み合わせます。 その答えのひとつがLTDでした。 エンジンには日本メーカーらしい技術。 スタイルには1970年代のアメリカ。 そして生産地もアメリカ。 この組み合わせが、LTDを少し特別な存在にしています。

KZ900 LTDからKZ1000 LTDへ

LTDの流れはKZ1000へ受け継がれます。 1977年にはKZ1000-B1 LTDが登場し、1978年にはKZ1000-B2 LTDへ。 カワサキの資料でも、1978年式KZ1000-B2 LTDの米国仕様は「Lincoln Factory」と記録されています。 つまり、現在では日本の旧車として語られることの多いKZ1000 LTDですが、その車体の一部は、実際にはネブラスカ州リンカーンから世に出ていたのです。 「日本車なのに、アメリカ生まれ。」 LTDというモデルを知るうえで、これほど分かりやすい特徴はないかもしれません。

約50年前のアメリカが、そのまま残っている

Mile One Garageでご紹介している1978年式KZ1000 LTDも、この時代に生まれた一台です。 約50年前、カワサキがアメリカ市場に本気で向き合い、日本の4気筒技術とアメリカのカスタム文化を融合させていた時代。 LTDを見る面白さは、スペックだけではありません。 なぜこの形になったのか。 なぜアメリカで作られたのか。 その背景を知ると、ティアドロップ形状のタンクや段付きシート、クロームパーツの見え方まで少し変わってきます。 旧車の魅力は、古いことだけではありません。 その一台が生まれた時代まで一緒に残っていること。 カワサキLTDは、それを分かりやすく感じさせてくれるバイクです。

参考資料

Kawasaki Motors Corp., U.S.A.「Kawasaki Heritage」,

Kawasaki Heavy Industries「Corporate History 1950–1989」,

Kawasaki Heavy Industries 公開車種資料